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東京地方裁判所 昭和44年(行ウ)145号 判決

東京都目黒区下目黒四丁目一番一七号

目黒グランドマンション四〇一号

原告

遠藤一平

右訴訟代理人弁護士

岡昌利

東京都千代田区大手町一丁目七番地

被告

東京国税局長長谷川寛三

右指定代理人

斉藤健

石塚重夫

日野照夫

藤田誠一郎

小林亘

右当時者間の所得税更正処分等に関する裁決取消請求事件につき、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当時者の申立て

(原告)

「被告が原告に対し昭和四三年七月一七日付でした各審査裁決を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

(被告)

主文と回旨の判決

(右申立てが容られないときは、)

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決

第二、原告の請求原因

原告は、玉川税務署長の原告に対する昭和三三年分ないし昭和三五年分の各所得税の更正処分、過少申告加算税および重加算税の賦課決定に対し、また、昭和三八年分、昭和三九年分の各所得税の更正の請求につき更正すべき理由がない旨の通知に対して、それぞれ、異議の申立てをしたところ、これらの異議申立ては、国税通則法八〇条一項二号の規定によつて審査の請求とみなされ、被告は、示法にも、原告を審尋することなく、また、原告提出に係る資料を無視し、誤認の事実に基づき、昭和四三年七月一七日付で右各審査請求を棄却する旨の裁決をなし、該裁決書の謄本は、同年九月六日ごろ、原告の肩書住所に送達された。しかし、当時、妻子は、他に別居し、原告も東京都世田谷区経堂一丁目二二番四石棉荘八号室に居を移し、肩書住所のマンションの居室は知人の内布哲子に一時使用させ、自らは商用のためほとんど右の転居先にもいなかつたような関係で、右裁決書謄本を肩書住所で発見した昭和四四年七月一三日まで、それが送達されていた事実を知るに由なかつたので、出訴期間を遵守することができなかつたものである。そこで、原告は、行訴歩七条、民訴法一五九条の規定に基づき、右事由のやんでから一週間内である同月一六日前記各審査裁決の取消しを求めるため本訴に及んだ。

第三、被告の主張

(本案前の抗弁)

原告が本件各審査裁決書の謄本の送達を受けたのは、昭和四三年九月七日および同月一二日であり、また、本訴が提起されたのは、昭和四四年七月一六日であるから、本件訴えは行訴法一四条一項所定の出訴期間を徒過したものであるので不適法とし却下されるべきである。

(請求の原因に対する答弁)

原告主張の請求原因事実中、本件各審査裁決にその主張のごとき違法がある点は否認、その余の事実は認める。

第四、証拠関係

(原告)

甲第一号証の一ないし五、第二号証の一、二を提出し、証人斉藤正明、高橋岩男、内布哲子の各証言、原告本人尋問の結果を採用し、乙第一号証の一ないし五は郵便官署作成部分の成立は認めるがその余の部分の成立は不知、第二号証、第五号証の一ないし五の成立は認める。その余の乙号証の成立は不知。

(被告)

乙第一号証の一ないし五、第二、第三号証、第四号証の一ないし六、第五号証の一ないし五、第六号証を提出し、証人矢部昭、泉重芳の各証言を採用し、甲号各証の成立は認める。

理由

本件訴えの適否について判断するのに、原告主張の事実関係のもとにおいても、審査の請求をした原告としては、早晩裁決書謄本の送達があることを予期し、被告に対して送達場所変更の届出をするとか、自ら肩書住所に立ち寄つて送達の有無を確めるとか、また、同所に居住していた内布哲子や管理人に回送を依頼する等送達の事実を了知しうるための措置を講ずべき義務があるにもかかわらず、漠然としてその挙に出なかつたこと明らかであるから、原告は、その責に帰すべからざる事由によつて出訴期間を遵守することができなかつたものとは認められず、他に、これを肯認するに足る主張、立証はない。

よつて、本件訴えは、出訴期間徒過に係る不適法なものであるから、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき、行訴法七条、民訴法八九条を適用して、注文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡部吉隆 裁判官 渡辺昭 裁判官 斉藤清實)

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